青森地方裁判所 昭和25年(行)39号 中間判決
原告 日本医療団
被告 青森労働基準監督署長
一、主 文
被告は本件訴訟の被告たる適格を具有する。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求める旨申立てその請求の原因として、原告は国民医療法により昭和一七年六月二五日設立された特殊法人で全国都道各府県に支部を設置し、都道各府県知事衛生部課長等をその役職員に嘱託又は任命し、折角その目的たる事業の運営を推進していたけれども、昭和二二年一一月一日同年法律第二二八号に則り解散し目下清算中である。ところで原告団青森県支部副参事たる職員木村清作は昭和二四年八月二二日午前九時三〇分頃、その職務の執行とは全然関係がなく青森市大字浦町字野脇四四番地国道において訴外小田桐盛枝の操縦する十和田湖行国鉄バスに追突され、頭蓋底骨折のため同日午前一一時同市栄町一九五番地積善会病院で死亡した。ところで被告は昭和二四年一一月二二日審査の上「右事故が業務上の死亡であるから原告は労働基準法により災害補償をしなければならない」旨決定、その旨原告に通知勧告した。仮りに業務上の死亡であるとしても被害者たる訴外木村清作の遺族において民法第七〇九条、第七一五条により加害者たる訴外小田桐盛枝及び使用者たる日本国有鉄道を共同被告として損害賠償を訴求するは格別被告において前叙のような審査決定に出る限りではない。そこで原告は前記審査決定を不服とし昭和二五年七月一日同法第八六条により青森労働者災害補償審査会に対し更に審査の請求をしたところ、同審査会は審査の上同年七月二〇日原処分庁の審査決定を是認維持し、原告の請求を排斥する旨決定し同年八月三日附でその旨原告に通知した。然し叙上のように右決定も亦違法不当である。よつてこゝに被告のした前記審査決定の取消を求めるため本訴に及ぶと陳述し、なお本件のように被告の行政行為に対する不服申立に対し青森労働者災害補償審査会が審査決定をした場合、利害関係人において裁判所に上級行政庁を被告として審査決定の取消を求めると、将た又原処分庁を被告としてその審査決定の取消を求めるとは法律上その自由に属するから被告の抗弁は理由がない。よつてこの点につき先ず中間判決を求めると申立てた。
被告代表者は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め答弁として、
(イ) 原告が被告のした審査決定に対しその上級行政庁たる青森労働者災害補償審査会に不服を申立て同審査会の審査決定を受け、よつて以て同決定が被告を拘束するに至つた以上、原告において同審査会を被告として出訴するは格別、最早や当事者たる適格を有たない下級庁たる被告を相手方として為された本訴請求は失当である。
(ロ) 仮りに被告もなお当事者たる適格を具えているものとすれば、訴外木村清作の死亡の時期がその業務の執行中でなかつたとの点を除き原告の主張事実を全部認めるけれども、同訴外人の死亡時期は応にその業務の執行中であつた。
よつて原告の本訴請求は失当である、と陳述した。
三、理 由
よつて先ず本件弁論及び裁判を「被告の当事者たる適格欠如の抗弁」の当否に限定して按ずるに、一般にある行政処分に対する不服申立を受けた上級行政庁が審査の上、原処分を相当と認め維持する旨の判断をした場合、不服申立人がこの判断の取消変更を訴求すると原処分自体の取消変更を求めると、将た又この両者を訴訟物として同時に出訴するとは一つにその自由裁量に属するものと解しなければならないことは行政事件訴訟特例法第二条の解釈上殆んど疑の余地がなく、所論労働基準法第八六条第二項の規定は毫もこの見解と矛盾するものではない。そして今原処分の取消変更を求める判決が確定したときは該判決はその事件につき関係行政庁を(従つて該判決の趣旨に牴解する内容の決定をした上級行政庁をも)拘束することは行政事件訴訟特例法第一二条に照し一点疑義の存しないところであるから、上級行政庁のした審判は右判決の確定と同時に該判決の趣旨と齟齬する限度において何等の措置を俟たず当然消滅するものといわざるを得ない。
果して然らば原告が上級行政庁たる青森労働者災害補償審査会を相手とせず、その下級行政庁たる被告を相手として提起した本訴に毫も所論のような違法不当の廉が存しない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 中川毅 小友末知 野原文吉)